破局②「王と宮女」承前:「赤い袖先」中巻・第二部

原作小説

唐諺文(タンオンムン)

ようやく貞純(チョンスン)大妃の居所から解放されたドギム。侍婢のモクダンが、ギョンヒからの暗号文=唐諺文を手渡す。

数字だけで書かれた暗号は「申の刻に、凌虚亭(ヌンホジョン)で会おう」という内容。人目のない場所で会おうというギョンヒの手紙を訝しむ。それでも、指定の場所へ向かう。が、その日も、翌日もギョンヒの姿を見ることはなかった。

その後、孝懿(ヒョイ)王后の医女ナムギと、中宮殿=孝懿王后居所の針房内人ギョンヒの2人が相次いで行方不明になったことがわかる。

ギョンヒが姿を消してから4日目。復職したホン・ドンノ(グギョン)がドギムのところに様子を聞きに来る。ギョンヒが書いたという暗号文について問い詰めるドンノ(グギョン)。さらに医女ナムギについても孝懿王后との関連などをドギムから聞き出そうとする。

(ドンノは、ドギムが孝懿王后を庇っていると感じている)

毎日のようにギョンヒを探すドギム。交代時間に遅れることが続き、提調尚宮にふくらはぎを叩かれる罰を受ける。ヨンヒ、ボギョンもギョンヒの身を案じる。

後苑にて

収穫の時期となり、サンが清義亭(チョンウィジョン)を見回ることになった。サンに従う形で、ドギムも日頃は立ち入れない一帯を探す機会を得る。ヨンヒも一緒にギョンヒを探す。

サンはドギムが宮女と連れ立って辺りをウロウロする様子を見て、彼女に何をしているのか尋ねる。(好きな女性のことを知りたい、という気持ちの表れ)最初は曖昧な返答をしたドギムだったが、ついに「友人がいなくなったこと」「暇を見つけては探し回っていること」を口にする。

ギョンヒが姿を消してから9日。悲観的になるドギムは、サンの前で思わず涙をこぼす。(好きな女性の涙にオロオロするサン)

帰り道、ドギムに「女の武器を使うこともできるのか」と嫌味を言うホン・ドンノ(グギョン)。そして、「何事であれ自分を通さずにサンに謁見などできない」と立場の違いを見せつけようとする。

ドラマでは、川に流れる匂い袋がギョンヒのものでは?と取りにいくドギムをサンが追いかける場面があります。

手がかりがつかめないままのドギムは、暗号文を渡してきたモクダンに重ねて話を聞こうと試みる(これで7度目)モクダンを探していたドギムは、蔵で首を吊ろうとした彼女を見つける。頑として死のうとした理由を口にしないモクダン。しかし、奇妙な言葉を口走る。

モクダン
モクダン

色掌内人(手紙の伝達を担当)たちは都承旨(トスンジ)様ぐらいひどいんです

「赤い袖先」中 カン・ミガン著

侍婢の立場で、ホン・ドンノ(グギョン)と接点が生まれることはない。追求を続けるドギム。

モクダン
モクダン

話せません!いくらギョンヒ様が心配でも……

私も死ぬし、ドギム様も死ぬことになります

「赤い袖先」中 カン・ミガン著

ドギムの厳しい追求に根をあげたモクダンは「ドンノ(グギョン)から毒=砒霜(ひそう)を渡されたこと」「その毒を孝懿(ヒョイ)王后の近くに隠すよう命じられたこと」「孝懿王后が元嬪(ウォンビン)を殺害した証拠を捏造しようとしていること」を告白する。

ドラマでも、多少のアレンジはありますが似たような場面が描かれます。

そして行方不明になった宮女たちは皆、宿衛所(スギソ)=王の護衛を担当する官庁にいることを告げる。

*ホン・ドンノ(グギョン)はこの時、宿衛所大将(=長官)

モクダンは、孝懿(ヒョイ)王后に仕える雑仕女が宿衛軍官に連れていかれる様子を目撃。すぐに中宮殿の尚宮に伝えたが、彼女はホン・ドンノ(グギョン)側の人間だった。父や弟の命と引き換えに幽霊話を広めるよう脅かされていたと分かる。

さらに、ホン・ドンノ(グギョン)は元嬪が側室として選ばれる2年前から宮女たちの手紙を盗み見ていたと告げる。また、行方不明になった日、ギョンヒがドギムに暗号文を渡したことを勘繰ったドンノ(グギョン)によって連れ去られたことも分かる。

宿衛所(スギソ)へ

部屋に戻り、ボギョンとヨンヒに事情を話すドギム。

ドギム
ドギム

もし私が明日の正午までに戻らなければ、これを大妃様に差し上げて

「赤い袖先」中 カン・ミガン著

一人で宿衛所へ向かうことを決意するドギムは、貞純(チョンスン)大妃から頼まれた筆写本に手紙を挟み、ボギョンとヨンヒに託す。直接王・サンに話すように勧める2人に、ドギムは「王様は信じられない」と語る。

ドギムから見ると、サンは都承旨であるドンノを庇い続けているため、事件そのものがウヤムヤにされるかもしれないと危惧した。そして、もしドギムもホン・ドンノ(グギョン)によって拘束されれば、大妃様が動く名目になると考えた。

ドギムは「王の使い」と嘘をつき、宿衛所へ入る。ドンノ(グギョン)に向き合うと、単刀直入に尋ねる。「ここにギョンヒはいるのか」と。あっさり認めるドンノ。

ドンノ(グギョン)は、ドギムがサンに「ドンノが孝懿(ヒョイ)王后を疑っていること」を告げずにいたことを指摘。そして「ドギムがサンを信じられなかった」という最も痛いところを突く。さらに、自分の立場を強くする駒としてドギムを必要としていることも口にする。

緊迫する場面からドギムを救ったのは、サン付きの内官イ・ユンムクだった。「サンが都承旨を呼んでいること」「ソン内人(=ドギム)は、ユンムクが連れていくよう命じられていること」を冷静に伝える。

*この時のイ・ユンムクは尚薬(サンヤク)の地位

ユンムクがドギムを連れていったのは、サンの寝殿近くにある蔵。ドギムは蔵に閉じ込められたうえ、ボギョンとヨンヒに渡した本を渡され(しかも挟んでいた手紙は消え)途方にくれる。

ドラマでも、ギョンヒを救い出すためサンではなく貞純(チョンスン)大妃を頼る姿が描かれます。異なるのは、ギョンヒらが閉じ込められていたのは、提調(チェジョ)尚宮チョ氏が組織化した廣寒宮(クァンハングン)の建物でした。

真相

蔵のなかで一晩明かしたドギム。サンが都承旨ホン・ドンノ(グギョン)を庇うため、自分を密かに始末しようとしていると考える。

翌日の正午ごろ、イ・ユンムクがやって来て「今夜亥の刻(午後10時ごろ)書庫に寄るように」と命じる。急いで部屋に戻り、ボギョンとヨンヒに会う。ふたりの話から、ドギムが渡した本がいつの間にか消えていたこと、部屋を誰かが探ったらしいことがわかる。

さらに思いもかけない事件の真相を知る。

・ホン・ドンノ(グギョン)が辞職を願い出たこと

・サンは(辞職願を待っていたかのように)受諾したこと

・サンがホン・ドンノ(グギョン)に奉朝霞(ポンジョハ)という名誉職を与えたこと*

・サンが宿衛所(スギソ)の廃止を考えていること

*官吏として呼び戻す意思はないという表れ

そして、ギョンヒの無事な姿を見る。ギョンヒが捕えられたのは、医女ナムギが連れていかれる現場を目撃したことから「宮女たちの行方不明に宿衛所が関与しているのでは?と考えたこと」「それを暗号でドギムに知らせたと思われたため」であったことも分かる。

その夜、書庫にて。後ろ手に組んだサンは、振り向くこともなく口を開いた。

サン
サン

私はドンノを選ばなかった

私がなぜドンノの無茶な要望を無条件に受け入れたのかわかるか?

彼を大切にすればするほど申し訳ない気持ちも大きくなったからだ。初めて会った瞬間から、自分の手で彼を滅ぼす日が来ることを知っていたからな

「赤い袖先」中 カン・ミガン著

そして、どんなに野心を持とうとも、どれだけ勢力を伸ばそうとも、ホン・ドンノ(グギョン)を生かすも殺すも自分の手にあると語る。しかし、ドギムが頼った貞純(チョンスン)大妃に対しては、国王といえども命じることはできないと付け加える。

サン
サン

私はお前を選んだのだ。でも、お前は私を裏切った

私はお前に父上の話までしたのに、お前は……

お前は隙を与えてくれない

一体、お前にとって私はなんなのだ?

「赤い袖先」中 カン・ミガン著

国王として冷静に次善の策を選ぶサン。友のためには規則も序列も飛び越して、行動するドギム。

一人の男である前に国王として選択・行動するサン。彼に一人の男であることを望むドギム。

このことをハッキリと知ったドギムは、わざとサンが傷つく言葉を口にする。

ドギム
ドギム

私は女として王様を慕うことはありません

これからも決してそんなことはないでしょう

「赤い袖先」中 カン・ミガン著

サンはドギムを引き寄せ、激しい口づけをした。そして彼女を解放すると背を向けた。

サン
サン

夜明け前に宮殿を離れろ

二度と私の前に現れるな

「赤い袖先」中 カン・ミガン著

ドラマでも、ドギムの選択に傷ついたサンが彼女に宮殿を離れるように命じます。

どれだけドギムを想っても、国王という立場を離れることのできないサン。心の中ではサンを慕いながら、手に入れることのできない”一人の男性としての愛”を求めるドギム。どこまで行っても平行線という愛の形は、かえって胸が痛みます。

前の話:「王と宮女」破局①

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ポスター・画像出典元:MBC番組公式サイト

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