ドギムへの告発を受け、真実を知ったサンは、どんな決意をするのでしょう?
真実②
恵慶宮の証言で、ドギムが『女範(ヨボン)』を盗んだ疑いが晴れ、当惑する和嬪(ファビン)。しかし「密通」という重罪もあり、それを証言するのは身内のミユクとヤンスンであることにホッとする。
2人は
- 昨年の夏からドギムの行動が怪しかった
- 早朝に料理を作ることがあった
- 軍服を着た男と8日に1回は会っていた
- その男とは、会うだけでなく、手紙や贈り物もしていた
などと証言する。
思い当たることのないドギム。そして、監察尚宮に促され、2人が「男からの贈り物」と言って差し出したものを見て、吹き出しそうになる。それは、兄シクからもらった青い腕ぬきだった。
思い出してみれば、兄と会った日、ミユクが何かと尋ねてくることがあった。また「知り合いが殿方と密通している」とも。兄と会ってホッとしたドギムを、恋だと勘違いしたようだと分かる。
ミユクらは、自信ありげに証言を続ける。「相手の男は、王を護衛する御営庁の軍校であり、王を騙す重罪である」「その人物が誰であるか名指しできる」と。2人の訴えに、中宮殿の空気が変わる。
貞純(チョンスン)大妃も表情を変え、厳しくドギムを問い詰める。ドギムは、「軍校と私的に関わっていたこと」「贈り物と手紙を交わしたこと」を認める。ついに大妃が「貞節を失ったのか?」と尋ねた時に思わず立ち上がったのはサンだった。
大妃様、今の話はすべて事実です
しかし、私が貞節を失うわけはございません
「赤い袖先」中 カン・ミガン著
キッパリと答えるドギムに、大妃はその先を促す。
その殿方は、私の兄だからです!
庚子(かのえね)年に御営庁に配属された軍校ソン氏ユンウの息子、ソン・シクをご確認ください
「赤い袖先」中 カン・ミガン著
ドラマでは、ドギムとシク兄妹の父はサンの父・思悼(サド)世子が亡くなった年に死亡したことになっています。また、密通の相手とされた人物が兄であることを証明するのが恵慶宮でした。
原作では、恵嬪(ヘビン)洪(ホン)氏のもとを訪ねるとき、ドギムが父・成胤祐(ソン・ユンウ)に連れられていく場面があります。「赤い袖先」上巻:第一部「東宮と見習い宮女」後ろ姿
次の瞬間、サンの大きな笑い声が響きわたる。そして、事前にそのことを確認しなかった監察尚宮を叱責する。監察尚宮の話から、調べは和嬪が行っており、ドギムが言い逃れをするからと監察府が担当することになった経緯が分かる。
大妃は口ごもる和嬪を叱責するが、他の王族の前で和嬪の責任を追求することを止め、代わりに彼女に仕える本房内人(ここではミユクとヤンスン)の浅はかな行動によるものだと矛先を納めた。
ドギムは、(和嬪への配慮は我慢したが)ミユクとヤンスンへの仕返しは忘れなかった。「ドギムがホン・ドンノ(グギョン)側の人間だと言いがかりをつけられたこと」「怪しげな占い師を呼んでいたこと」をその場で証言した。また、これまで我慢してきたク尚宮もドギムの証言に同調した。
*ドギムも、和嬪が不利になるような証言は一切せず(薬湯のことなど)一線を守る
サンだけでなく孝懿(ヒョイ)王妃までが、ホン・ドンノ(グギョン)との関係においてドギムを庇ったこともあり、貞純大妃が言い渡した処罰は
- ドギムには罪がなく、あらぬ疑いをかけた詫びに布地2反を与える
- ミユクとヤンスンは50回の棒叩き
- 監察尚宮は減俸と謹慎
というものだった。
その夜、ドギムの部屋にギョンヒ、ヨンヒ、ボギョンが泊まり、久しぶりに友との時間を過ごすことになった(同室のミユクが棒叩き後の治療で帰らないため)
あなたたちがいてよかった……
「赤い袖先」中 カン・ミガン著
御真(オジン)影
サンは、宙合楼(チュハムヌ)へ奉安された御真影を見に行った。描かれた自身の顔は、彩色と手直しにより幸せそうだった。
続いて、璿源殿(ソノンジョン)へと足を伸ばし、先王・英祖(ヨンジョ)の御真影の前でユンムクと祖父の思い出を偲んだ。サンにとって、今でも思い出すのは父が死んで6日が過ぎた日の祖父の言葉だった。「お祖母様を恨んではならない」父の死に対して、何もできなかったこと、父の死に母方の祖父も同調したこと、そして祖母の行動……
ふたたび宙合楼へ戻ったサンは、自身の顔と向き合う。絵の中の自分の顔に「望むものを欲する」目を見る。王となり、恨むことも、手に入れたいものを手に入れることもできると気づいたサンは、1つの答えにたどり着く。
夕方、ソ尚宮を呼び慶寿宮殿へと使いに行くように告げる。和嬪のもとで休むのかと尋ねるソ尚宮に、サンはこう命じた。
ソン家ドギムを今夜侍寝(シチム)するから連れてこいという意味だ
「赤い袖先」中 カン・ミガン著
運命の夜
一連の騒動の後、慶寿宮殿の雰囲気は明るさを失っていた。夕方、和嬪に呼ばれ恐る恐る部屋に入ると、ドギムは彼女の謝罪の言葉を聞くことになった。
和嬪は、あの場でドギムが自分を責めるような言葉を発しなかったことにも言及した。そして、サンが不機嫌にならず、和嬪の家門を褒めてくれたと誇らしそうに付け加えた。そして、再びドギムと信頼関係を築きたいと「サンとの関係」について問いかけようとした時…使いのソ尚宮が到着した。
今夜、サンが慶寿宮殿を訪れるのかと期待する和嬪。しかし、ソ尚宮が告げた王命は想像していたものではなかった。
遅れないように急ぎなさい
結局、こんなふうに返事を聞くのね
「赤い袖先」中 カン・ミガン著
事情を察した和嬪。緊張するソ尚宮。その中で、ドギムだけが自分の運命が大きく変わったことに気づいていなかった。
お前はとっくに気配を感じていたはずだ
「赤い袖先」中 カン・ミガン著
動揺するドギムにソ尚宮は、こう続けた。
仕方ないのよ。お前は笄礼(ケレ)をしたんだから。事実上、王との婚礼はすでに挙げているのよ
「赤い袖先」中 カン・ミガン著
ドラマでは、世孫サンが笄礼(ケレ)の練習(準備)中のドギムを見て、勘違いする場面があります。
原作小説では、即位したサンに大殿に仕える新入り宮女のドギムがお酒もどきを出す場面がありました。
大殿に到着したドギムに総がかりで準備を施す。「30年ぶりの承恩」に、誰もが正式な手順が分からず戸惑うばかり。化粧を施したドギムは、薄い内着(チマチョゴリの中に着る白いチマ)を着て部屋に入るようにと背中を押される。
寝殿で寝間着を身につけたサンは、ぼんやりと蝋燭の炎を見つめていた。彼女にも酒を勧めるサンの表情に、落ち着きを取り戻したドギムはようやく声を発することができるようになる。「今夜のこの時間は罰*なのか」とサンに問う。
*一度だけ寵愛を受け、その後に品階を授けられることもなければ、その女性は一生肩身の狭い思いをする
サンは、昔のやり取りを口にする。「承恩を下したら、あり得ないという私たちの仲は”次”になるのか」幼い頃は、「世孫嬪(=今の孝懿王妃)が世継ぎを産んでもいないのに承恩を受けられない」と拒絶したドギム。
再び同じ答えを口にすると、サンは王命を拒否するドギムの代わりに彼女の召使を罰するよう命じる。
史実などでも、ドギムは3回サンの承恩を拒んだとされています。最初は、「世孫嬪に世継ぎが生まれていないため」そして、自分の召使が罰せられることになり、承恩を受け入れたと言われています。原作小説は、ほぼ史実に沿ったエピソードが盛り込まれているようです。
ドラマ「イ・サン」が制作された当時は、和嬪に仕える宮女をサン=正祖(チョンジョ)が見染めたという話が伝わっていたので、小説やドラマのように、ドギムは和嬪のもとにいたのではないかと思われます。
お酒を飲みながら、サンは一時期ドギムが仕えた恩彦君(ウノングン)の話を口にする。そして、亡き父・思悼(サド)世子が、サンにとって異母弟となる恩彦君を可愛がっていたことを語りだす。それが羨ましくて、サンは祖母である暎嬪(ヨンビン)=義烈宮に可愛がられることで父との関係もよくなることを期待したのだと。
ところが、事態はサンの望まない方へと進み、サンが義烈宮に愛されるほど義烈宮とその息子・思悼世子の間はギクシャクとして、結果、サンと父との溝も深まったことをドギムに聞かせる。嫡子でありながら、傍流の弟を妬むことになったサンが、今でも恩彦君を大事にするのは父親が愛した存在だから、親孝行するためなのだと語る。
どうしてお前は私に恋慕しないのだ?
「赤い袖先」中 カン・ミガン著
自分の存在がサンの心の傷を思い出させたことに気づいたドギムは、永遠に彼のもとから去ることを決意する。
私を恋慕しなくても、お前は私のものだ
去ると言うな。私のいないところで泣くな。私以外の人から傷つけられてもいけない。お前は私のものだ。だから私のそばにいろ
「赤い袖先」中 カン・ミガン著
サンの想いを拒もうとしたドギムだったが、「ドギム」と名前を呼ばれ、拒むことができなくなった。そして、彼女自身もサンを受け入れたいと思っていることに気づいた。
ドラマでは、ロマンチックに描かれた一場面。原作小説では、サンがドギムを呼んでからの2人の物語が続きます。痛みと拒絶の末に結ばれたサンとドギム。初めて出会った時から15年もの歳月が流れた2人。下巻へと続きます。
前の話:「王と宮女」王と宮女①
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ポスター・画像出典元:MBC番組公式サイト
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