若き王「王と宮女」:「赤い袖先」上巻・第二部

原作小説

世孫から第22代国王・正祖(チョンジョ)として即位するところから始まります。サンの右腕として立場を固めていくホン・ドンノ(グギョン)。一方で、宮殿から追われる人たちも。ドラマとは違う描かれ方にも注目です。

即位

25歳という若いイ・サンが正祖として即位。

英祖(ヨンジョ)の崩御の後、喪に服したサンは食事をしなかった。貞純(チョンスン)王后=大妃(テビ)の願いを聞き届けるかたちで、ようやく湯薬を口にしはじめる。面倒な湯薬の番は、自然とドギムが担当することに。

即位の場面は、崇政殿(スンジョンジョン):慶熙宮 崇政殿

原作小説では、英祖の出番はさほど多くありません。代理聴政の話から、崩御、そして正祖即位とスピーディーに話が進みます。「イ・サン」でもドラマ「赤い袖先」でも描かれた英祖の記憶云々のエピソードはないのです。

即位3日後

ホン・ドンノ(グギョン)を承政院(スンジョンウォン)同副承旨(トンブスンジ)、薬院・副提調(プチェジョ)へ任命。

その他

宮人たちの取り締まりを始める。

この時に提調(チェジョ)尚宮は、不正蓄財その他の罪で宮殿を追い出される。

ドラマでは、英祖(ヨンジョ)がサンの命を狙った罪すら見逃そうとするが、提調尚宮チョ氏は自ら死を選ぶという描かれ方

ボギョンの出宮

大殿=先王・英祖付きの宮女だったため、主の逝去に伴い宮殿を去ることに。酒幕(チュマク)で働くらしいと、ウォレが他人事のように話す。

淑儀(スギ)文(ムン)氏=コ・ソホンの廃庶人(ぺソイン)

英祖の側室。数々の醜聞を起こし、悪女とされる。その兄も問題行動を多々起こしていた。

追い出される形で、側門から放り投げられる。最後まで悪態をついていた彼女も、貞純(チョンスン)大妃(テビ)の姿に固まる。

史実でも、思悼(サド)世子の死に関わったとされている

ドギムの日々

清衍(チョンヨン)郡主(クンジュ)の筆写を断るほど、毎日サンに反省文を命じられる。チョンヨン郡主は、日々の悩みをドギムに話しているうちに「王=サンが不倫をしている」と口走ってしまう。

サン=正祖に、貞純大妃へ湯薬を届けられるよう命じられるドギム。これは、大妃の様子を探るという別の命令でもあった。即位前は、何かと世孫サンの肩をもってくれた貞純(チョンスン)王后=大妃(テビ)。これからサンとの間に「実家の慶州(キョンジュ)キム氏が権力を握るか否か」という水面下の駆け引きが始まる。

大妃殿で、王妃=孝懿(ヒョイ)王后付きのギョンヒと偶然会う。そこで、サンの実父・思悼(サド)世子=景慕宮(キョンモグン)の不幸な出来事*を匂わす話題に。(情報通のギョンヒに比べ、ドギムは当時何が起きたかを知らない)

*1762(壬午)年に、思悼(サド)世子が米びつに閉じ込められ亡くなる「米櫃事件」

今では大殿=正祖付きの至光宮女であるドギムは、政治的なバランスも考え、貞純大妃と一定の距離を置こうとする。大妃が先手を打つ。

貞純大妃
貞純大妃

横になってばかりでは寂しい。枕もとで本でも読んでおくれ。そなたのように読むのがうまい宮女はいない。

「赤い袖先」上 カン・ミガン著

心理戦で疲労困憊のドギムが宮殿に戻ると、多くの本が燃やされているところだった。小説などの”くだらない書”を嫌うサン=正祖の命であった。本の山の中に、かつて皆で筆写した『郭張両門録(クァクチャンヤンムンロク)』があることに悲鳴をあげるヨンヒ。燃やしたくないヨンヒと、命令であれば従うしかないというドギムの間で、本の取り合いが起きる。

それを収集したのはホン・ドンノ(グギョン)。それならば、と「郭張両門録」をヨンヒに手渡す。ヨンヒは喜んで本を持っていく。ドンノ(グギョン)の言動に警戒心を抱くドギム。

私が歓心を買いたいのは、目の前にいるあなた

逃げれば逃げるほど追いかけたくなるのが男の心理

「赤い袖先」上 カン・ミガン著

原作小説では、ホン・ドンノ(グギョン)は女性に軽いチャラ男キャラ。この先も、ドギムに対して微妙な態度をとる場面が出てきます。

その後、サンに貞純大妃の様子を報告するドギム。大妃はすでにサンに対し、ドギムに本を読んでもらいたいと伝えていた。(サンは断っていた)また官僚たちへ出した課題が白紙で提出されたり、歌を書いていたりすることに腹を立てるサン。

ソン・ドギム
ソン・ドギム

王様はもっとお笑いになったほうがよろしいかと存じます

「赤い袖先」上 カン・ミガン著

二人だけの気やすさもあり、時には冗談めかして、ある時は褒め言葉を並べ、巷で流行っている小説『雲英(ウニョン)伝』の話もするサンとドギム。「雲英伝」が宮女の叶わぬ恋の話だったことから、ドギムは慎重に言葉を選ぶ。

ソン・ドギム
ソン・ドギム

私は生涯、王様だけをお慕い申し上げます

当然そうでなければなりませんから

「赤い袖先」上 カン・ミガン著

ドラマでは、前のセリフ「サンを慕っている」というところだけ耳にして、サンが有頂天になる場面がありますね。

そして、清衍(チョンヨン)郡主の悩みをそれとなくサンに伝える。夫がもう少し妻に優しくすれば、女性の心の悩みも軽くなると。その言葉に反論するサン。自分の考えが間違いであれば、罰するようにと言うドギム。

王と王室を翻弄した罪を問い、お前の服の結びをほどかねばならぬぞ

一度承恩を受けると、二度と一介の宮女ではいられない身になる

最後まで側室の品階を得ることができなければ、蔑視されて腐っていなければならない

「赤い袖先」上 カン・ミガン著

このサンのセリフは、ドラマでは別の場面で使われています

ドギムにとって、最も恐ろしいことを告げるサン。ここでドギムは賭けに出る。自分の考えが正しければ、褒美…ボギョンを宮殿に戻してほしいこと…を望む。

ソン・ドギム
ソン・ドギム

宮女には所有できるものが少なく、友は私の持てるすべてですから

「赤い袖先」上 カン・ミガン著

彼女のいう友だちに、ボギョンだけでなく清衍(チョンヨン)郡主も含まれると感じるサン。自分のためにも同じようにするのか?とドギムに問う。「もちろん」に続き「そうしなければならないから」と答えた彼女に少なからず傷つく。

闘いの始まり

サンは朝廷の改革のため、ホン・ドンノ(グギョン)に権力を集中させた。

ホン・イナン(ジョンヨ)に対して、左議政の官職を剥奪のち流刑(流刑地で自死)。貞純大妃の兄=キム・ギジュ:黒山島(フクサンド)へなど、敵対する臣下たちを一掃した。

ドギムの休暇と復帰

久々の休暇で故郷に帰ったドギム。長い年月がさまざまなものを変え、懐かしさより心に痛みを感じる。そしてサンのいる宮殿が、いつしか懐かしい場所となっていることに気づく。

なじみの本屋に顔を出す。宮女の書く諺文=ハングル書体は人気があることをドギムに告げ、彼女が持ってきた『李馨慶(イヒョンギョン)伝』(男装女人の小説)に喜ぶ。

世間話から、西大門の南側にある栗の木の家には近づくなと言う本屋のお爺さん。その日は、先だって宮殿を追い出された淑儀(スギ)文(ムン)氏=コ・ソホンの賜薬(サヤク)による死罪執行の日だった。寵愛を受けた側室たちの最期に、幸せだったのかと惑う。

宮女から側室となった暎嬪(ヨンビン)李(イ)氏と淑儀(スギ)文(ムン)氏。ドギムは心のどこかで二人と自分の人生と重ねてみているように感じる場面。

8日間の休暇を終え、復職したドギムは周りから歓待される。それは、彼女がいない間サンが不機嫌だったため。皆、ドギムに王様の世話を任せられることにホッとする。サンに湯薬を渡し”都承旨(トスンジ)”という言葉に訝しむドギム。ホン・ドンノ(グギョン)が都承旨にまで昇格したことを知る。

久しぶりにテンポの良い会話が続く。豪快に笑うサン。そして清衍(チョンヨン)郡主の夫、光恩副尉から手紙が送られてきたことを告げる。罰せられると緊張するドギム。着替えを手伝うと、戸の向こうから体格のよい宮女が入ってきた。それは、ボギョンだった。

王様に借りを作った感じがすると戸惑うドギム。勝った気分になれないという彼女に、サンはドギムの顎をつかみ「また今度かかってこい」と告げる。

この章の最後は、サンもドギムも異性として互いを意識している場面。焦ったいような、くすぐったいような時間です。

前の話:「東宮と見習い宮女」お前のことを考えている

次の話:「王と宮女」駆け引き

ポスター・画像出典元:MBC番組公式サイト

「赤い袖先」上巻を一気読み

序章~運命へのカウントダウン

第一部 東宮と見習い宮女

一章 後ろ姿

二章 分かれ道

三章 鬼の殿閣

四章 東宮と見習い宮女

五章 お前のことを考えている

第二部 王と宮女

六章 若き王

七章 駆け引き

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