ドギムはサンの新しい側室付きの内人として再び宮殿へ
慶寿宮(キョンスグン)殿
ドギムが仕えるのは、和嬪(ファビン)ユン氏。元嬪(ウォンビン)と同じく、形ばかりの揀択(カンテク)で選ばれた彼女は、最初から「嬪*」の地位を得ていた。
*通常は、世継ぎを産んだ側室に与えられる地位
ユン氏は、サンの寵臣とのつながりがある家柄だが、和嬪が入宮にあわせて連れてきた3人の宮女たちは正式な教育を受けておらず、宮殿のしきたりにも疎かった。そこで、英祖(ヨンジョ)に仕えていたク尚宮とドギムが和嬪付きの宮女として選ばれたのだった。
(和嬪の実家から来た3人は、貞純大妃をはじめ、他の宮女たちからの評判は決して良くなかった)
半年ぶりに会う友…ギョンヒ、ボギョン、ヨンヒは変わらずドギムにとって良き話し相手であり、宮殿内の様子を教えてくれる。
和嬪(ファビン)は、元嬪より年上で気さくな人柄なこともあり、気難しい孝懿(ヒョイ)王后とも無難に接して宮殿の生活へと馴染んでいった。評判のよい和嬪だったが、ドギムは「実家から連れてきた気心の知れた3人、乳母・ミユク・ヤンスンだけ」しか付き合おうとしない様子に危うさを感じていた。
また、官婢から急に宮女となった3人は、他の宮女たちを寄せ付けなかったり、仕事へ口出しをしたり、怪しげな呪いの類(世継ぎを得るため)を行うなど、ドギムやク尚宮との溝が深まる一方だった。
初めての合宮(=国王サンと夜を過ごす)の日は、和嬪も準備に余念がない。昼には、恵慶宮=恵嬪(ヘビン)が和嬪のもとを訪ねてくる。
ドギム、そなたが和嬪のそばにいて一安心した
大妃様がそなたを呼び戻したほうがいいと強く推してくれたおかげで、私も王様を説得することができたのだ
「赤い袖先」中 カン・ミガン著
再会を喜ぶ言葉のあと、恵慶宮はドギムにこう言った。
王様はそなたを追い出して、士大夫の娘から側室を選んだのだ。そして、そなたはその側室に仕える宮女だ。そなたの本分がなんなのかはわかるな?
「赤い袖先」中 カン・ミガン著
原作とは異なりますが、ドラマでも恵嬪が笄礼(ケレ)の時に、サンの「(宮女ではなく)士大夫の娘を選ぶ」という発言をドギムに聞かせる場面があります。
原作小説でも、恵慶宮は基本的にドギムに対して好意的なのですが、「サンが自分の思いを封印して、”良家の娘”を側室に迎えると決めたことは国王としてもプラスになる」という思いがあり、ドギムとは一線を引くことになります。
夜が近づくにつれ、和嬪とお気に入りの3人(ミユク・ヤンスン・乳母)は笑い声を立てながら準備を進める(宮中では当たり前のしきたりを知らないミユクらが、その都度、ドギムに尋ねるので、ドギムにとっては居心地の悪い時間となる)
ドギムが寝殿を整えていると、和嬪が「(王妃=孝懿王后に比べて)見劣りがしないか」不安な様子で尋ねるので、和嬪の顔に自信が戻るまでさまざまな言葉をかける。
身分(立場)の違いを実感しながら、心の奥で慕うサンが夜過ごす場所を整える、サンの側室を褒めるなど、ドギムにとって楽ではない時間
足早に寝殿を立ち去ろうとするドギムが見つけたのは…ミユクとヤンスンの2人が「男の子を授かる呪術(しかも、火を使う!)」を合宮の間、行おうとしている姿だった。2人の嫌味にも耐え、何とか火種を消したドギムはサンの到着を出迎えるハメに。見つからないよう、尚宮たちのあいだで頭を下げ続けていたが、サンはその中にドギムの姿を見つける。
懐妊
サンと和嬪が寝殿に入ると、足早にその場を離れたドギム。彼女は、サンを恨む気持ちで自分を奮い立たせようとするが、結局、自身の心の奥にある「懐かしさ」が広がっていくことを認めざるを得なかった。
その後、ドギムはサンが合宮だけ終えると大殿へ戻ったことを聞く。(サンのこれまでを思えば、当然の行動だが)和嬪にとっては、サンに気に入られなかったとしか思えず泣くばかり。そんな和嬪を慰めるのもドギムの役目だった。
ドラマだけでなく、原作小説でも合宮のしきたりは詳しく描写されません。以前、映画の一場面「後宮の秘密」だったか「背徳の王宮」だったかで、大人の時間(笑)を見た時に、これは、男性も女性も大変だなと思ったことがあります。
ドギムが和嬪を慰める様子を見て、ミユクが以前のことを謝り、自身のことをドギムに話し始める。彼女の祖父は、両班だったこと、お嬢様=和嬪が世継ぎを産めば、自分も認められると思っていることなどなど。
次の合宮が稲妻により中止となったのち、和嬪に妊娠の兆しがみえる。医女らによる診察を待つ間、ドギムは和嬪に命じられ、サンのそばに仕えることになる。最後に会った時とは別人のように、疲れが顔に出ているサンの様子に胸を痛めるドギム。
思慕しない私だけを見て一生腐っていろ。それが十分な罰になるであろう?
「赤い袖先」中 カン・ミガン著
サンの言葉に反論することもできず、ドギムは本心を隠して淡々と接する。サンとドギムの心理戦の時間は、医女たちの”朗報”によって終わりを告げる。
懐妊の知らせに、サンは半信半疑。孝懿(ヒョイ)王后は落ち込み、和嬪のいる慶寿宮殿は笑いに包まれた。また、恩彦君(ウノングン)は、ホン・ドンノ(グギョン)によって元嬪(ウォンビン)の養子となった完豊君(ワンプングン)の君号変更を願い出て、これ以降、常渓(サンゲ)君となる。
王室が慶事でにぎやかな頃、ドギムにも嬉しい知らせが入る。やっと!兄シクが科挙に合格。御営庁(オヨンチョン):軍営の1つへの配属が決まる。辛い訓練に疲れた兄に軟膏や食べ物を届けるため、ドギムは宮殿の西門、迎秋門(ヨンチュムン)に立ち寄るようになった。
原作小説に登場する兄シクは、科挙に落ち続けており、人は良いけれど、今ひとつ頼り甲斐のない人物として描かれています
産室庁(サンシルチョン)
和嬪の懐妊の知らせから5ヶ月。御医(オイ)の言葉とは裏腹に、サンは懐妊の知らせに対する不安を隠そうとしなかった。しかし、和嬪のお腹が大きくなり、胎動も感じられるようになったことで、予定日の3ヶ月前に産室庁:王妃と側室の出産に備えて臨時に設けられる官庁を設置することとなった。
出産予定の2月になると、サン自身も世継ぎの誕生に向けて期待を見せるようになったのだが…
3月半ばになっても、和嬪にはお産の兆しがまったく見えなかった。サンも不満を口にするようになる。
ドギムの周りで、ギョンヒ、ボギョン、ヨンヒがさまざまな話をする。「胎死不下(たいしふか):亡くなった胎児がお腹の中に留まっている状態では?」「胎動はあったらしい」「偽胎(想像妊娠)では?」
そんな中、急に和嬪のもとをサンが訪れたため、ドギムが和嬪の湯薬を持って行くことに(ミユクは礼儀作法を知らないため、サンが来るときはドギムの役目となる)甲斐甲斐しく和嬪の面倒をみるドギムの様子を眺めていたサンは、和嬪の引き留めにもかかわらず足早に戻ってしまった。
サンがいなくなった後、和嬪はドギムに尋ねる。
前から王様がお前を見る目つきがなんだか……
「赤い袖先」中 カン・ミガン著
こうして、懐妊したものの予定日を過ぎても生まれず、またサンに優しい言葉をかけてもらうことの少ない和嬪の心に、ドギムへの疑念がわき始めます。
青い腕ぬき
いつもは兄への届け物を渡す迎秋門で、この日は兄シクからドギムへ贈り物があった。それは、夜市で買ったという青い腕ぬき。ドギムたち宮女が身につけるチョゴリの赤い袖先だけでなく、肘まで覆う腕ぬきだった。
走り去る兄を見送るドギムは、誰かの視線を感じて振り返る。それは、内官ひとりだけを供に、奎章閣(キュジャンガク)か書庫へと向かうサンだった。
ドラマでも描かれた場面。当然、サンは腕ぬきを渡す男性が、ドギムの兄だとは知るはずもありません。また王の女を意味する”赤い袖先”を、青い腕ぬきが覆うことでの心理的葛藤も表現しているように感じる場面です。
違和感
和嬪の心にドギムへの敵対心が芽生えてから、和嬪の視線や言葉づかいなどにドギムに対する嫌悪感が含まれるのをドギム自身も感じていた。
そんなある日、ミユクが和嬪の実家から取り寄せたと思われる湯薬を運ぶ場面に出くわす。
*王室の人々が飲む薬は、すべて内医院(ネイウォン)を介して出される。害のあるものが口に入ることのないように厳しい決まりがある。ドラマ「トンイ」でも、チャン・ヒビンが我が子でもある世子の病を知られないよう、取り寄せた薬を飲ませていたことが問題になりましたね。
和嬪を前にしても、実家から持ち込んだ薬を飲まないよう諌めるドギムに苛立つ和嬪。「夕方に来る王様の世話は、ク尚宮に任せるのでドギムは席を外しておくように」と命じる。
その様子にミユクが「今は薬に文句をつけるより、巫女を呼んでホン・ドンノらの恨みを払わなければ」と付け加える。この言葉で、ドギムは流刑となったホン・ドンノ(グギョン)が亡くなったことを知る。
ドギムは、情報通のギョンヒに「ドンノ(グギョン)が横城から江陸(カンヌン)へ追放され、その地で亡くなったこと」を確認した後、慶寿宮殿を離れて一人で彼の死を考えた。とめどなく涙があふれ、一人泣くドギムの姿を月明かりが映し出していた。その様子に気づいたのは、慶寿宮殿にいるサンだった。
ドラマには、ミユクとのやり取りはありませんが、ドギムが一人ドンノ(グギョン)の死を悼み涙する場面があります。のちにサンが「自分のいないところで泣くな」と言う、離れたかに見えたサンとドギムの道がふたたび近づくキッカケとなるシーンです。
無視しようとしてもドギムの姿を目で追ってしまうサン。サンと距離を置こうとしても、心の中では懐かしさと温もりを感じるドギム。次の章で惹かれ合う二人を結びつけたのは、意外な人物かもしれません。
ポスター・画像出典元:MBC番組公式サイト
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